episode.1 イランのバスで

episode.1 イランのバスで

 

イラン中部の、砂漠に囲まれた町・ヤズド。

この町でバスに乗ったとき、
決して忘れられない出来事がおこったのです。

 

砂漠の町とはいえ季節は春。

風は爽やかで心地よく、
街路樹の緑が涼しげな影を落としています。

 

町中を移動するため、
地元バスに乗って座席に座ると、
近くの席のおじさんに話しかけられました。

「どこの国から来たんだい?」

「旅行かな?それとも仕事?」

 

しばらくお話しして、彼は、

「Welcome to Iran!」

と言っておりていきました。

 

外国人旅行者としては、
町の人に歓迎の言葉をかけてもらえると、
それだけで安心できるし嬉しくなります。

 

イランでは、
町なかを歩いているだけでも

“Welcome to Iran”

と言われることが多いのです。

 

さて、
そのバスを降りようとしたときのこと。

 

運転手さんにお金を払おうとすると、
ペルシャ語で何か言われます。

意味が理解できずに戸惑っていると、
どうやら、お金はいらないよ、ということらしい。

 

「もしかして、さっきの人が払ってくれたの⁈」

と思った時、、

 

座席のほうから声がかかりました。

ふり返ると、
黒い布で全身を覆った女性が
にっこりとこちらを見ていました。

 

「あなた日本から来たんでしょ?
 バスの料金は、わたしが払っておいたわ!
 良い1日を過ごしてね、Welcome to Iran!」

 

・・・!!

全身に電流が走ったかのようでした。

 

どれだけ嬉しそうにお礼を言ったのか、
自分では分かりませんが、
それを聞いた彼女も本当に嬉しそうでした。

車窓に映る笑顔に手をふり、
バスは小さくなっていったのです。

 

「今度は僕が、別の誰かにこの幸せを回していきます…!」

そう心に誓ったのでした。

 

この話には、後日談があります。

 

翌日、町を歩いているとき、
ベンチに座っている人と目があって、

「あーっ!」

とお互いに声があがりました。

なんとバスで出会った女性だったのです。

 

彼女はニーラさんといいました。

しばらくお話しして、
昨日感じた気持ちと感謝を伝えらたのは
本当に幸運なことでした。

 

ニーラさんは、別れ際に、
ささっと連絡先のメモを書いて
渡してくれました。

「なにか困ったことあったら連絡してね。力になるわ。」

 

それから10年以上がたった今でも、
いただいた幸せは鮮やかに残っています。

 

たとえ通りすがりだろうと、
目の前の人を想って行動する…

別に大きなことじゃなくていいのだと思います。

小さな親切から、
幸せの輪が広がっていったら素敵ですよね。

ニーラさんのことを思い出すたび、
そんな輪を作っていけるようになりたいと思うのです。

 

右の女性がニーラさん。娘さんとお友達と

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